その日はやってきた…
そんな中、妻もパートで働くようになっていく…。半年でフルパートに切り替わり、仲の良い友達も出来た頃だった…。頼られ意気揚々と働いていた妻に、新人指導の役割が与えられた…。
しかしそれが思うようにいかなかった事で、妻の心に二次的な障害が宿った…。
その日の夜…妻は豹変したのである。
妻は我慢の限界を超えた反発(口ごたえ)に合い、それを受け入れ、ギリギリの気持ちで帰ってきたようであった。その日、子供たちが自分の部屋で落ちついた時間に私は帰宅した。
妻は入浴中であった…。
そんな場面はよくあったのだが、その日は違った…。「ただいま」と脱衣所で声をかけると浴室内から妻の話し声が…。
『ナゼ?』と思いドアを開けると、妻は浴室の天井あたりに目をやり、念仏を唱えるように話していた。そして突然の怒号、その繰り返し。目の前で声をかける私に反応せず、気づく事もない…。一人話している相手はその新人に向けたものだった…更には、人を叩く様に浴室ブラシで壁を叩き始める…
私は見ていられず涙を堪えて妻を抱きしめた…。シャワーが暴れてびしょ濡れになりながら妻をお風呂から出し、着替えさせソファに座らせた…。その間、おとなしくも妻の目は虚に天井の先を見ていた…。
少し落ちついたと思った瞬間…、野獣が目を覚ましたかのように今度はソファテーブルを蹴り倒し、再び暴れ始めた…。その時の私はなす術もなく、ただまた強く抱きしめることしか出来なかった…。
その日、眠りに着くまで私は妻を見守った。
アザだらけになっていた…
愛しあい、許しあい、励ましあってきた私たちの形が変わっていった始まりの日だった…。